富士山景観配慮条例の施行に備えて

投稿日: カテゴリー: 行政書士

このところおちゃらけモードの記事ばかりでしたが、今回は真面目です。

 

【世界文化遺産と条例】

本日、山梨県の勝山ふれあいセンターにて、山梨県世界遺産富士山の保全に係る景観配慮の手続に関する条例(略して「富士山景観配慮条例」)の説明会が行われました。以下では、「本条例」と表記します。

山梨県世界遺産富士山の保全に係る景観配慮の手続に関する条例

本条例の施行は、平成28年6月24日です。

 

ご存知の通り、富士山は2013年6月22日に世界文化遺産として登録がなされました。

また、訪日外国人の数が2013年にはおよそ1036万人、2015年には倍近くのおよそ1974万人が訪れました。

政府は2020年の東京オリンピックの年には、4000万人の訪日外国人を迎える目標を立てたそうです。

観光庁の統計資料

 

観光地である富士山周辺の地域では、至る所で外国人観光客の姿を見るようになり、それに応えるように観光施設が増加するのは、至って自然なことです。

そうすると、建設業界、ホテル業界なども盛り上がり、沢山の宿泊施設や飲食店などの観光施設が我先にと造られるようになります。

 

そこでひとつ心配されるのが、世界遺産リストからの登録抹消です。

 

せっかく世界文化遺産として登録されたのに抹消されるというのは、国あるいは富士北麓地域を観光資源とする地方自治体、事業者にとってかなりのダメージでしょう。

もっとも、世界遺産リストに登録された観光地では、溢れかえった観光客による渋滞が発生するといった問題など、世界遺産を担う地域は、そういった問題に対処する上で大きな決断を迫られることがあります。

実際に、かつて世界遺産リストに登録されたことのあるドイツの「エルベ渓谷」は、渋滞の緩和策として建設した橋をめぐり、世界遺産リストから抹消されてしまいました。

 

私はエルベ渓谷に行ったことはなく、世界遺産リストからの抹消が地域にどのように影響を与えたのかはわかりませんが、世界文化遺産としての登録を維持する上で、景観の保全と利便性のバランスは、常に向き合わなければいけない課題といえます。

 

本条例も、「事業に係る景観の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって富士山の保全に資することを目的とする。」とあることから、上記のような課題の解決策のひとつとして制定されたように思います。

(ちなみに、今回の説明会での担当者の方の説明では、ICOMOSからの指示があったからではないとのことで、あくまでも自主的な条例制定ということだそうです。)

 

 

【対象事業、対象地区】

本条例が適用される事業は、富士山景観配慮地区内で、かつ、一定の規模以上の事業を実施しようとする場合です。

 

「富士山景観配慮地区」とは、山梨県知事が「富士山の保全を図る上で事業に係る景観の保全について特に配慮する必要があると認められる地区」として指定した区域のことです。

 

また、一定の規模以上の事業は、本条例の施行規則の別表で定められており、場所や工作物によって変わります。

 

 

【富士山景観配慮条例のポイント】

私は、本条例のポイントを3つに分けました。

 

1 各許認可等及び工事着手前の景観配慮手続

 

2 関係書類の公表

 

3 罰則はないけど勧告・公表はある

 

以下、具体的に説明します。

 

 

1 各許認可等及び工事着手前の景観配慮手続

本条例では、「景観評価の実施」「景観配慮書の作成・提出」「事業者見解書の作成・提出」といった手続きを行い、それが完了した後に初めて、許認可等の申請・届出及び工事を行うことになります。

 

手続の流れを見てみましょう。

以下、カッコ書の数字の見出しは事業者が行う手続で、(知事)とあるのは、基本的に知事による行為です。

また、わかりやすくするために簡略化している部分もありますので、ご了承下さい。

 

(1)景観評価の実施

「定点観測地点」として定められた位置を調査し、その地点から写した現況写真を撮影し、完成後の予測合成写真を作成します。

定点観測地点は、富士山周辺地域にいくつか指定された場所で、北緯・東経まで指定されています。

 

また、景観への影響について現地調査、文献調査などから予測・評価します。

本条例の技術指針を読んでいただくとわかりますが、景観評価に関する調査において、様々な視点からの状況についての情報を把握するよう事業者側に求めています。

実際はどのレベルまで要求されるのかはわかりませんが、技術指針に列挙された事項が知事や関係市町村長による判断要素になるのは間違いないと思いますので、これらの要素から情報を収集・分析するといいでしょう。

 

(2)景観配慮書の作成、送付

上記の写真を添付し、調査に基づき完成後の結果・説明等を「景観配慮書」に記載し、知事に送付します。

 

(知事1)知事意見書

その後知事は、市町村長等の意見を聴いた上で、景観配慮書の送付日より起算して60日以内に、事業者に対して知事意見書を送付します。

 

(2’)修正の届出等

事業者は、受領した知事意見書を踏まえて、景観配慮書の記載事項にかかる事業の目的・内容を検討し、修正の届出をし、または次の手続に進みます。

なおこの際、事業者は、景観配慮書の記載事項について説明をする機会を与えるように請求できます。こちらは、事業者が知事意見書を受領した日から30日以内です。

 

(3)事業者見解書の作成、送付

景観配慮書、知事意見書を勘案した上で、さらに必要な見直し等を行い、結果をまとめた事業者見解書を知事に送付します。

なお、この事業者見解書の送付は、行おうとする事業にかかる許認可等の申請・届出の日より60日以上の間を開ける必要があります。これは、次の知事意見書の手続の期間を考慮しています。

 

(知事2)知事意見書、または知事意見書が不要である旨の通知

知事は、事業者から事業者見解書の内容について特に問題がなければ、受領した日から起算して60日以内に、事業者に対して、知事意見書が不要である旨の通知を送付します。この通知が送付された事業者は、(3)における60日期間を待たずに許認可等の手続および工事に着手することができます。

一方、事業者見解書の内容について問題がある場合、知事は、知事意見書を事業者に送付します。送付された知事意見書を踏まえて事業者見解書を検討し、修正などをした事業者見解書を知事に送付します。

なおこの際も、事業者は、景観配慮書の記載事項について説明をする機会を与えるように請求できます。こちらも、事業者が知事意見書を受領した日から30日以内です。

さらに、知事は、措置要請を事業者に対してすることもできます。事業者は、指定された措置をとらなければなりません。

 

 

2 関係書類の公表

上記の(知事2)の知事意見書、または知事意見書が不要である旨の通知に関して、事業者同意の上で、インターネット上に景観配慮書、事業者見解書、知事意見書等の関係書類が公表されます。

ただし、「個人及び法人の権利利益を不当に侵害することのないよう配慮」された書類について公表されないこととなっています。

景観配慮書等には、公開・非公開を選択する欄が設けられているものがあります。

 

ちなみに、県の担当者の方の説明によれば、公表する趣旨は、手続きの透明性の確保、当該事業に対する県民の理解の促進、事業者に対する当該事業への自覚を持ってもらうということでした。

 

 

3 罰則はないけど勧告・公表はある

本条例は、罰則が設けられていません。そうすると、本条例の実効性の有無が問題になりますが、本条例に違反した場合などには「必要な措置を講ずべきことを勧告することができる」と定めており、さらに、正当な理由なくその勧告に従わない場合には、「その旨及びその勧告の内容を公表することができる」と定めています。

本条例は、事業者の事業活動を萎縮させずに、なおかつ景観に「配慮」してもらいたいという意向が反映されたのでしょう。

 

 

【用地取得、詳細設計の前に】

今回の説明でもありましたが、用地の取得や、詳細な設計を行う前に、本条例の手続をするように指示がありました。

上記の手続を行う前に、イケイケドンドンで進めてしまうと、本条例に違反することはもとより、最悪の場合には世界文化遺産登録の抹消という結果に結びついてしまうおそれがあります。

 

 

【本条例は、「山梨県世界遺産富士山基本条例」の理念を具体化するもの】

本条例の制定より以前、平成27年3月25日に、「山梨県世界遺産富士山基本条例」が公布されています。

 

本条例の目的では、基本条例を直接引用していないものの、「富士山」「富士山の保全」「顕著な普遍的価値」といった定義を基本条例から引用していることからすると、基本条例を具体化するものであると考えられるでしょう。

本条例が、富士山周辺の景観と開発を理想的な形へと誘導できるか、しっかりと見届けたいと思います。

 

 

【ご説明に伺います!】

手前味噌で申し訳ございませんが、本条例の手続について直接説明して欲しいという事業者の方がいらっしゃいましたら、私が直接ご説明に伺います。

景観配慮の手続もお手伝い致します。

お気軽にお問い合わせ下さい。

 

山梨県内の出張説明 : 1時間7,000円(消費税込、資料代込、交通費込。全体的な説明は1時間程度です。)

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